万葉集以降、古人の注目をあびた由良の崎は今の神谷崎を指し、このフィヨルド式の湾を由良湾と呼んでいたが、有田郡湯浅付近で憧々とした海に別れをつげ、さびしい山路を分け入り、由良坂を越えて再び、海を遠望しつつ眺める風景は、旅人の目を飽かせず望んだことだろう。静かな入江と港、白崎辺りの荒磯は人里離れていただけに、自然の宝庫であり優美な景観であった。青と緑につつまれた由良、歴史と文化に富んだ由良、ひなびた寒村だった由良は、いま大きく伸びようとしている。
全般に、由良といえば発展性のない漁村として明治末期まで閉ざされた日高郡の北海道というイメージが強かった。明治中期から昭和初期にかけて、衣奈・畑・大引・神谷などで石灰石が採掘され、順調に操業されたが規模も小さく期待もうすかった。 |