昭和の激動(11)

水仙の群(由良の町花)
白崎 石灰岩特有の浸食地形

昭和三十年(一九五五年)一月一日。念願の由良・衣奈・白崎一町二ヶ村が合併した。今から五十年前、白崎と合併する話がでて以来の実現である。昭和三十年の十月一日現在、戸数2,240戸、人口10,355人、新体制は新しい由良を宣言、激動した昭和の前半に終わりをつげ三十年代の幕があけようとしたのである。

新由良町が発足して一年目、観光面で勝負をつけようと提案されたのが、衣奈・白崎一帯の海岸地域である。
御存知、由良は昔から観光と天然植物に恵まれ、特に衣奈・白崎は銀の歯のように曲折した海岸には、寄巌怪石に絶えず黒潮が波しぶきをあげ、砕け散る波花は、由良ならではの光景であった。あたたかな微風と直射する日光は自然の恵み豊かにして、その風景は誰人も魅了した。しかも昔は交通が不便だっただけに人の足跡なく、唯、ありのままの姿であったため、ここに得難い天然記念物の宝庫も残されていた。

天然記念物である門前の大岩、名刹興国寺、三尾川から衣奈の海岸、蓬莱岩や川代の海水浴場、戸津井から小引、一歩山に登れば水仙の群れが自生、明治初年まで猿が群棲したいわゆる白崎海岸、椿と枇杷の自然林、昔は広い面積にわたって密生していたという、ハカマカズラ・あこう樹は御承知だが、浜辺に行けば浜木綿も咲いて、まことに由良は天然記念物の植物園であった。
なかでも海岸の景色がよく、石灰岩特有の浸触地形や鍾乳洞がところどころに見られ、変化に富んだ雄大な眺めは白崎ならではの光景であった。

浜木綿 あこう樹
椿と胡蝶の自然林 ハカマカズラ

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